もしも「階級ワッペン」をもらったら

家族の中でも、友達の中でも、いつでも自分がビリの扱いをされるとのび太は嘆きましたそこでドラえもんがのび太にトップの気分を味あわせてあげるために取り出したひみつ道具が“階級ワッペン”です。

機能と効果

ドラえもんの階級ワッペンは、「上官の命令は絶対」という階級を強制する階級章です。

旧日本陸軍の階級をモデルに上は「大将」から下は「二等兵」まで17枚あります。これをつけると、より位の高い階級ワッペンをつけている人の命令に逆らえなくなります。

裏面が衣服に吸着するようになっていて、一度貼りついたが最後、この世で剥がせるのは「大将」(の階級ワッペンをつけている人)ただ一人ですただし階級ワッペンのついている服を脱ぐことなら、どの階級でもできます。

「大将」が剥がすなり、自分で服を脱ぐなりして、体から階級ワッペンが離れると、効力が失せます。

肌にも吸着するかどうかは不明。当サイトでは「肌には吸着しない」と仮定します。

有用性: ★★☆☆☆

あなたが階級ワッペンをもらったら、どの位の階級章を自分をつける?

きっとそれは「大将」でしょう。だって下位のデメリットはあまりに大きく、「二等兵」に至ってはメリットがなにもない始末です。絶対的に有利な「大将」以外を選ぶ理由がありません。

「階級ワッペンのついている服を脱ぐ」という唯一の抜け穴も、初めに「服を脱ぐな」と命令しておけば塞げます。

「大将」として君臨して、配下の者を意のままに操れるのはそりゃまあ便利だけども、そんな身勝手な振る舞いを「有用」だなんていえません。

階級ワッペンのルールは不公平が過ぎるのです。もちろん、自分から進んで「二等兵」になって、絶対服従を負うのなら話は別です。

いわゆる「M」の人が納得したうえでプレイに使う分には、階級ワッペンは優れた「枷(かせ)」として評価されるでしょう。

危険性: ★★★☆☆

階級ワッペンの効力は、言いなりになることを部下に「納得させる」わけじゃなくて、ただ単に「強制する」だけです。

意に反することをやらされた部下は「なんでこんなことをやらなきゃならないんだ!」と不平不満を募らせることでしょう。当然ながら、その怒りの矛先は、命令を下した上官に向きます。

あまり無茶な命令に従わせ続けると、そのうち寝首をかかれるかもしれません。

悪用度: ★★★★★

児童虐待、パワハラ、DV……。この世には圧倒的に優位な立場を利用した加害がはびこっていますその温床となる「不均衡な関係性」を、誰とでも、一瞬で、結べる。それが階級ワッペンの恐ろしさです。

しかも異常なまでの優位性です。「死ね」と命じるだけで自殺に追い込める、まがうかたない「生殺与奪の権利」を掌握できます。

階級ワッペンを用いた自殺教唆や性暴力の立件は困難を極めます。表面上は「強制力のない、ただの指示」だからです。

ゆがんだ支配欲に溺れたモンスターの手に階級ワッペンが渡ったなら、おぞましい所業が繰り返されることでしょう。

秘匿性: ★★☆☆☆

ジャイアンとスネ夫が「なぜか命令を聞いてしまう」という状況と「服に貼られたワッペン」との因果関係に気づいたのは、二人がドラえもんのひみつ道具に慣れ親しんでいたからでしょう。

一方、ドラえもんのご近所さんじゃない我々は、こんな呪術的な代物が意思決定に介入しているだなんて、そうそう思い当たりません。

ただし階級ワッペンの上官として効力を発揮するには「対面での命令」が不可欠だから、こちらの面が割れることになります「誰に命令されたか」が明らかなのでは、階級ワッペンの真相が明るみに出る出ない以前の問題です。

革命度: ★★★☆☆

相手がどれだけの権力者だろうと、階級ワッペンの部下にすれば、ひざまずかせられます。

それでも、社会に変革をもたらすとなると、長く面倒な道筋をたどらなくてはいけませんそんな面倒をすべてすっ飛ばす“ポータブル国会”があるのに、わざわざ階級ワッペンで変革を成そうとするなんて、ずいぶん酔狂なことです。

まとめ

人に服従を強制する階級ワッペンはろくなものではありません。のび太の無茶な命令に従わせられたクラスメイトの言葉が象徴的です。

「昔の軍隊は、こんなふうにむちゃな命令で、むちゃな戦争をはじめたんだね」

てんとう虫コミックス『ドラえもん』第15巻「階級ワッペン」より

こんな軍靴の音が聞こえてくるようなひみつ道具をなにゆえ選ぶのかというわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、階級ワッペンの優先度は星0.5つです。

道具名称:
階級ワッペン
原作初出:
『ドラえもん』第15巻「階級ワッペン」
カテゴリ:
「か」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第15巻 / 悪用 / 統制
公開日:
2020年12月19日

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