ジャイアンとスネ夫が他人の家の塀に描いた落書きを家主が見つけました。すると二人は近くにいたのび太に濡れ衣を着せたのです。
この話を聞いて立腹したドラえもんが、二人に仕返しするために取り出したひみつ道具が“らくがきじゅう”です。
ドラえもんのらくがきじゅうは、遠隔で落書きができる銃(の形をしたデバイス)です。
この銃で狙った先の映像が映し出される付属のタブレット「スコープテレビ」の画面に落書きすると、その書き込みが標的の実物に反映されます。
スコープテレビのパネルは表面に書いたものが簡単に拭き取れるようになっているので、何度でも消して繰り返し使えます。
「落書き」には、「乱雑な書きもの」と「不当なところへのいたずら書き」という二つの意味合いがあります。では、らくがきじゅうの目的はどっちか? といえば、そりゃまあ機能からして「いたずら書き」でしょう。
物陰に隠れて遠隔からいたずら書きできるだなんて有用――ってんなわけあるか! いたずら書きされるほうの身にもなりましょう。
なにか人に迷惑をかけない、有益な使い道をひねり出すとすれば、「凹凸の激しいところに平面の絵を描く」です。
平面の絵や文字を立体物にそのまま反映させるらくがきじゅうなら、「空間に平面の絵が浮かび上がるトリックアート」が簡単に描けます。
Felice Varini, 9 triangles dansants, CC BY-SA 4.0
本来なら迷惑千万な落書きだって、バンクシーのようにある域を超えればありがたがられます。らくがきじゅうがあれば、あなたもストリートアーティストとして名を馳せられるかも!?
せいぜい落書きしているところを見つかって怒られないようにしましょう。
「渋谷のスクランブル交差点を見下ろすスタバの窓際席から、交差点を行きかう人たちを手当り次第に塗りたくる」といった大規模ないたずらをらくがきじゅうは容易にします。
子供じみたいたずらだけど、その損害は洒落(しゃれ)にならないレベルです。
「歴史的な美術品に落書き」とか「試合中のプロスポーツ選手を目潰し」等々のセキュリティをすり抜ける必要のある悪さだってお手の物。
そもそも「落書き」が違法なのだから、らくがきじゅうは言わば「犯罪用のひみつ道具」です。
らくがきじゅうの射程距離は不明です。作中の描写からすると、さして長くはないでしょう。ターゲットが肉眼で見える程度の距離しか届かないと推測されます。
ターゲットの側からもこちらを視認できるわけです。タブレットをいじっているだけに見えるとはいえ、絶対にバレないとも限りません。
どれだけ卓越した表現者だって、「落書きで社会を変える」という大業を成せるとは思えません。
いたずらは論外だし、グラフティはスプレーで直接描いてこそだろうし、らくがきじゅうは「これぞ!」という有益な用途に欠きます。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、らくがきじゅうの優先度は星
つです。