絵本版『ロビンソン漂流記』を読んですっかり感化されたのび太は、使い終わった割り箸を集めていかだを作って、無人島を探そうと思い立ちました。
その様子を見ていたドラえもんが「志(こころざし)は立派だけども割り箸でいかだを作るのはバカげてる」と思い、貸してあげたひみつ道具が“風船いかだ”です。
ドラえもんの風船いかだは、空気を入れて膨らませるフロートタイプのいかだです。膨らませる前は手のひらに収まるほどのコンパクトサイズなのに、空気を入れると1m四方以上の大きさになります。
通常のマット形フロート(ビーチマット)も空気を抜いてきちんと折りたためば、手のひらサイズとまではいかないにしても、それなりに小さくできます。風船いかだ唯一の特性である伸縮性も特筆するほどではありません。
風船いかだはのび太が一人で海洋冒険に向かうときにドラえもんが貸し与えたひみつ道具です。海洋冒険には危険が伴うので、ひみつ道具ならではの特性は高い堅牢性にあると推測されます。
丈夫で携帯性も優れている風船いかだは、海やプールで遊ぶのにうってつけです。けれども遊びに使う分には市販のフロートで全然間に合います。
ならばやはり海洋冒険向けかというと、これを船にして大海原に出るのはやはり無謀というもの。完全に『クレイジージャーニー』案件です。
ほとんどの人にとって、「普通のよりちょっと便利なフロート」でしかないひみつ道具です。
いくら風船いかだが堅牢だとしても、それだけでは海洋冒険にまつわる危険から身を守るには足りません。とはいえ、危険なのはあくまで環境であって、風船いかだ自体は安全です。
フロートの類いに悪用方法はないでしょう。
風船いかだの伸縮性は現代のテクノロジーを凌駕(りょうが)しています。だからといって一目見ただけでそれが未来の物だと確信する人はごく限られているでしょう。大抵の人は、なんらかの認知バイアスが働いて自分を納得させてしまうはずです。
優れた伸縮性といっても“スモールライト”の足元にも及びません。しょせんはフロートなので革命的な出来事とは無縁です。
“餅製造マシン”など、ひみつ道具の中には現代の道具で代用できるものがあります。風船いかだもその一つです。「未来感ハンパねー!」とわくわくさせられる要素はあまり見いだせません
せっかくのひみつ道具なのだから、うんと夢のあるものを選びたい。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、風船いかだの優先度は星
つです。