狩猟本能なのかなんなのか、ともかく武器は男の子ゴコロをかき立てます。そのへんのくすぐりどころは『ドラえもん』も当然押さえていて、武器系のひみつ道具は大長編などの冒険エピソードには欠かせません。その一つが“水圧銃”です。
ひみつ道具の水圧銃は、水中専用の拳銃です。直線的に伝わる圧力波を発射します。その威力は体長およそ3メートルのサメを一発で撃退するほど強力です。
強力な圧力波を発射するにもかかわらず、反動がまったく生じない無反動銃であることが作中の描写から見て取れます。一方、装弾数に関する描写はありません。便宜上この項では、無制限に発射できるものとします。
水圧銃が登場するエピソード「海底ハイキング」では、海中でサメなどの外敵から身を守るために使われました。現実に使う場合でも、主立った活躍の場として考えつくのは海における護身用でしょう。
とはいえダイビングスポットは危険なサメが少ない海域が選ばれていますし、サメに遭遇したとしてもダイバーにすぐさま襲ってくるわけではないそうです。
サメによる被害が多いのはダイビングよりもサーフィンです。パドリングしているサーファーの姿は、海中から見上げると、ホホジロザメが主食にしているアザラシに似ているからだといわれています。
ただしその場合、ホホジロザメは海中から突如として襲ってきます。気づいたときには手遅れなケースがほとんどでしょう。
映画『ソウル・サーファー』予告編
水圧銃が護身用として有効な場面は思いのほか少ないかもしれません。
漁に使うにしても、一般的な漁具に効率の面で劣ります。
銃器は犯罪だけではなく、事故も巻き起こします。水圧銃も例外ではありません。誤って自分自身や人を撃ってしまうヘマなんて絶対にしないと、誰が言い切れるでしょうか。
大きなサメを一撃で仕留めるほどの圧力波です。人間の頭や胴体に当たれば、最小被害でも気絶は免れないはず。海中での気絶は死を意味します。死体が上がっても凶器を断定できず、事故死として判断される可能性が高いでしょう。
また、水圧銃を手に入れると、潜水漁をして「とったどー!」と遊びたくなるかもしれませんが、漁業権なく漁をするのは密漁であり違法です。
水圧銃の見た目は明らかに拳銃のたぐいです。実弾ではないとはいえ、破壊力のあるなにかを発射していることもまた明らかです。とてもじゃないけど人前で使える代物ではありません。
狭い直線上の水だけに波動を伝播させるのは、不可能に近い技術だと思われます。また、発射時の反作用がどこともなく消えるのも常識では考えられません。水圧銃は一見普通なようで、その実とんでもないオーバーテクノロジーです。
とはいえ水圧銃を手に入れても世の中を変えることはできないでしょう。
銃器の所持が厳しく制限され、職務以外で銃を所持している人の数がごく限られている日本でも、毎年のように猟銃で人を撃ってしまう事故が起こっています。水中でしか使えないとしても、水圧銃も銃であることに違いありません。
これといった有用な使い道がないのに危険性が高いのなら、所有しないに越したことはないというわけで、水圧銃の優先度は星
つです。