すごろくでコマを進めてやっと上がり(ゴール)に近づいたのに、「ふりだしにもどる」のマスに止まってしまって、初めからやり直しになるとがっくりします。
でも、やり直すことでチャラになるのが「なにかを築き上げた期間」ではなく、「なにかを失った期間」だったとしたら、がっくりするどころか歓迎されるでしょう。
取り返しのつかない失敗をなかったことにしたい、とかなんとか。そんなときに出番となるひみつ道具が“フリダシニモドル”です。
ドラえもんのフリダシニモドルは、物事の始め、すなわち振り出しとなった日時に戻れるサイコロです。
これを振ると、頭に思い浮かべている物事の振り出しに世界(使用者とその近くにいる人以外)がリセットされます。結果的に、ある種のタイムトラベルとなります。
最大でどれだけ遡れるかは不明。6面サイコロであることを踏まえて、ここでは6日前までと仮定します。
このフリダシニモドルは原作に再登場するたびに効果がやや変わるうえに、アニメ版独自の機能まであるため、機能・効果を断定できません。
当サイトでは『ドラえもん』第35巻「ぐ~たらお正月セット」に登場した際の描写を基に推定しています。
「しまった!」と気づいたときにはもう手遅れで、挽回しようのない致命的な失敗をしたとき、ゲームのようにセーブデータからやり直せたら、どんなにいいことか。
そんな不可能を可能にするひみつ道具がこのフリダシニモドルです。
なにか大切なものが永遠に失われてしまうような事態に陥ったら、まず深呼吸、そしてフリダシニモドルを振りましょう。結末を知っている二度目の時間軸でなら、たぶん大丈夫です。
そこまで深刻な状況でなくたって使えるけれど、使用者の時間経過は戻らない、つまりその分だけ世界の時間軸より早く老いることになるのを忘れてはなりません。
たかが数日と侮るなかれ。ちりも積もれば山となります。フリダシニモドルは最後の手段としたほうが身のためです。
フリダシニモドルで振り出しからやり直せば、よりよい結末を迎えられる? 本当に?
のび太とドラえもんは“タイムマシン”や“タイムテレビ”を使って過去、ひいては未来を変えようとしては失敗しました。見えない力が働いて、結末を変えられなかったのです。
何度やり直しても最悪の結末を迎えて、いたずらに絶望が深まるばかりだった、とはならないことを祈ります。
あなたが人を殺したとします。そこでフリダシニモドルで世界をリセットして、その事実をなかったことにしたら、罪もまた消えるのでしょうか。
歴史改変が絡む非道は、人間の尺度では計れません。
この世のどこかにフリダシニモドルを持っている人がいて、もう何度も世界がリセットされていたとしても、時間に縛られている我々がそれを知る由はありません。
もちろん、フリダシニモドルで一緒に振り出しに戻った人は例外です。世界のリセットをまのあたりにすれば、いやでも異変に気がつきます。
意図せず人を巻き込んでしまわないように、周囲をちゃんと確認してから使いましょう。
大勢の命が失われる災害があります。特にここ日本は地震大国です。日本がプレートの境界に位置している以上、いつかまた必ず大地震に見舞われるでしょう。
そのとき、フリダシニモドルを持っていたら?
過去へ戻っても地震は止められないけれど、震災地区に住む人々を事前に避難させられるかもしれません。
もちろんそんな大規模な事前避難を実施するには確固たる根拠が求められます。「ひみつ道具で未来を見た」なんて世迷い言は通用しません。
ハリウッド映画なら、大統領を連れて過去へ戻って共に人々を救うところです。よし! 首相を無理やり伴って、いざ過去へ⁉
正味の話、時間を越えることが絵空事とされているこの現代において、「大地震から人々を救う」といった大規模な目的をフリダシニモドルで果たすのはたぶん無理でしょう。
でも「交通事故から人を救う」程度ならできる、いや、できてしまうんです。
フリダシニモドルを手にしたならば、死亡事故のニュースを見るたびに、「その時その場所へ行けば救える」という可能性を突き付けられます。
だからといって、そのすべてを救っていたら自分の人生が破綻します。見て見ぬふりをしなければならないのです。正義感や共感性の強い人はおそらく耐えられないでしょう。
あなたが「人がどうなろうとなにも感じない」という人でないなら、フリダシニモドルを選ばないほうが身のためです。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、フリダシニモドルの優先度は星
つです。