もしも「かぜうつし機」をもらったら

「風邪は人にうつせば治る」なんてのはいうまでもなく迷信だけれども、「確かにそんな気がしなくもない」と話半分くらいには信じている人もいるでしょう。そんな迷信を実現するハタ迷惑なひみつ道具が“かぜうつし機”です。

機能と効果

ドラえもんのかぜうつし機は、風邪を人へ移す糸電話です。風邪をひいている人が声の代わりに咳(せき)を吹き込むと、音声ではなく風邪が相手に伝わります。

風邪が人から人へ感染することを表す「うつる」ではなく、移動することを表す「移る」。つまり風邪の症状と原因が丸ごと人へ移動するので、元の人の風邪は一発で治ります。

風邪の症状は、悪化も好転もその変化が通常は緩やかです。しかしかぜうつし機を使った場合は、風邪を移されたとたんに体調を崩してしまいます。そして元の人は、すぐさま元気を取り戻します。

有用性: ★★☆☆☆

風邪を一発で治せるのは確かにありがたい。けれども誰かを犠牲にするのはあまりに身勝手が過ぎます。これを有用とするのは、はばかれます。

ただし、両者が納得した上で計画的に利用するなら話は別です。高齢者が風邪をこじらせて肺炎で死亡することは珍しくありません。加齢や疾患などで体が弱っていて風邪が命取りとなる場合などに、健康な家族が風邪を引き受けるのはありでしょう。

また、仕事や学業でベストを尽くすべき日(例えば入学試験など)に風邪を一時的に預かってもらうのも有用です。

危険性: ★★☆☆☆

かぜうつし機で移るのはあくまで風邪のみ。ほかの疾患などは移らないので、思わぬ事態を引き起こす危険度は低いでしょう。もちろん、移される人が健康であることが前提です。

仮に問題が生じたとしても、風邪をすぐに移し直せば回復できます。とはいえ「たかが風邪だから」と甘く見ると痛い目に遭うかもしれません。

悪用度: ★★★☆☆

相手の承諾を得ずに風邪を移すのは悪用にほかなりません。高熱を伴うひどい症状の風邪を高齢者や乳幼児に移せば、死亡することすらあるでしょう。

しかし、まずは風邪をひいている人がいないと話が始まらないし、症状が軽ければすぐに回復するかもしれません。計画的犯行に使うのは難しく、場当たり的な犯行にとどまるでしょう。

秘匿性: ★★☆☆☆

かぜうつし機で風邪を移すには、受信側を相手に持たせて、顔へ向けてもらう必要があります。よって、こっそり使うのはほぼ不可能ですが、それがただの糸電話ではなく、超常的な道具であると見抜く人はそうはいないでしょう。

しかし、風邪の症状が急激に出るため漠然とした不信感は覚えるはず。繰り返し使えば、その不信感が確信へと変わることは大いにあり得ます。かぜうつし機は、秘匿性の高いひみつ道具とはいえません。

革命度: ★★★★☆

病院で行われる風邪の治療はあくまで対症療法です。風邪薬は症状を和らげているにすぎません。抗生物質も、ウイルスが原因の風邪には効果なし。風邪の直接的かつ根本的な治療薬はまだないのです。

そんな風邪を引き起こしているウイルスを体外へ排出させるのだから、かぜうつし機の革命性には疑いの余地がないというもの。ただ正確にいうと排出するのではなく、ほかの人へ移動させるので手放しでは喜べないのが玉に瑕です。

どんなに革命的だとしても、「かぜなおし機」ではなく「かぜうつし機」である以上は倫理的に問題があり、一般普及はさせられないでしょう。

まとめ

家族にかぜうつし機の存在を明かして、風邪を分担すれば便利なのかもしれません。風邪をひいたら仕事を気兼ねなく休める社会になったほうがより良いのだけど。

かぜうつし機がなくたって、風邪をひいても取りあえずはなんとかなる。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、かぜうつし機の優先度は星1つです。

道具名称:
かぜうつし機
原作初出:
『ドラえもん』第2巻「このかぜうつします」
カテゴリ:
「か」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第2巻 / 健康
公開日:
2014年10月18日

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