のび太たちが遊びに使っていたサッカーボールが駄目になってしまったので、新しいのをみんなで割り勘して買うことに決まりました。けれどもいざお金を集めようとすると、みんな出し渋って少しも集まりません。
そこでドラえもんが集金するために取り出したひみつ道具が“ばっ金箱”です。
ドラえもんのばっ金箱は、悪さをして叱られている人の元へ駆けつけて、罰金を徴収するロボット式の貯金箱です。
胴体が350ml缶と同程度のサイズという小型ロボットながらも高い機動力を誇り、更には高い集音機能を備えているらしく、離れた場所の叱り声も即座に感知して駆けつけます。
罰金は一回につき10円。腹部から伸び出るフレキシブルアームを駆使して罰金を強制的に徴収し、頭頂部にある硬貨の投入口から本体内に貯め込みます。貯め込んだ罰金を守るための、熱線を放射する攻撃機能も備わっています。
叱られてさえいれば誰彼なしに罰金を徴収、それも強引にするのでは、現実世界では使えません。たとえ10円ぽっちでも窃盗は窃盗ですし、ばっ金箱の攻撃性の高さでは強盗罪に問われる場合すらあるでしょう。
せめて執行対象を指定できれば……。でもそういった、ついていて当然の機能が欠けているようなナンセンスさが『ドラえもん』の魅力の一端ですから、こればかりは仕方がありません。
原作でジャイアンがばっ金箱の熱線攻撃を受けましたが、これといった負傷はしませんでした。どうやらばっ金箱の攻撃力は低めに設定されているようです。
それでもばっ金箱が人にケガをさせてしまうこともあるでしょう。見ず知らずの人とのもめ事に発展する恐れが多分にあります。
罰金を徴収する正当性がまるでないのですから、ばっ金箱を使うことイコール悪用です。ゆすりたかりと変わりません。
みずから好き勝手に駆け回る自律型ロボットのばっ金箱に秘匿性を求めても仕様がない。こんなものが街に放たれたら、あっという間にSNSで拡散されてしまいます。
叱られているか否か、また今後叱られそうな人は誰か、対象者はお金をどこに持っているか、などの判断を瞬時かつ的確に下すばっ金箱の制御プログラムは、非常に高度なものです。
心を持っていると断言できるドラえもんに比べれば低級ですが、それでも十分に革命的なロボットでしょう。
ばっ金箱は実用性に乏しくて、もらっても使い道に困るけれど、高度な小型ロボットとしての魅力はなくもない。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ばっ金箱の優先度は星
つです。