しなくちゃならないことは沢山あるけれど、どれから手をつけるか考えている内に時間が無駄に過ぎていって、結局なにもできないとのび太が言いました。
そんな言い訳染みた主張を聞いて業を煮やしたドラえもんが取り出したひみつ道具が“スケジュールどけい”です。
ドラえもんのスケジュールどけいは、スケジュールを守るように人を指導する時計型ロボットです。
スケジュールを書き込んだカード(四角い紙)をこれの挿入口に入れると、起動して、高い機動力で対象者をつけ回して執拗に指導し始めます。
対象者が逆らうものなら針状の腕で攻撃してでもスケジュールを強要します。対象者が逃げ隠れても、レーダーで居場所を探知して、どこまでも追いかけます。
一度設定したスケジュールはなにがあっても変更できません。融通がまったくきかないので、状況が変わってもスケジュールを強行します。
ドラえもんはスケジュールどけいを使って怠慢なのび太をなんとか矯正しようとしました。するべきことを先延ばしにして、結局なにもしないのび太のような怠け癖がある人が、自分を律したいときに有用でしょう。
しかしスケジュールどけいには「融通がまったくきかない」という致命的な欠点があります。原作エピソードでは、必要ないのにトイレに行かされたり、壊れて映らないテレビを観させられたりと、意義のなくなったことも強制されました。
状況の変化が十分に予期できる短期的なスケジュールにとどめればそういった事態を避けられるものの、それでは怠け癖を矯正するには不十分です。
融通がきけば自己管理のトレーナーとして有能なのに……。でもそんな大雑把さもひみつ道具の魅力のうちだから仕方ありません。
スケジュールどけいは状況の変化を一切考慮しません。地震が起ころうが津波が来ようがスケジュールを強行させると推定されます。下手すると間接的に殺されかねません。長期のスケジュールを設定するのは避けるべきでしょう。
スケジュールどけいが指導する対象者は、カードにスケジュールを書いた人ではなく、カードを入れた人です。勝手なスケジュールを書いたカードを人に入れさせれば、スケジュールどけいに強制させられます。
とはいえ、スケジュールどけいは常軌を逸した厳しさで指導するだけのひみつ道具です。要は人が暴力で強要するのと変わりありません。秘匿性もなきに等しいので、あえてスケジュールどけいを使って強要する意味はないでしょう。
口やかましくまくし立てながら動き回るスケジュールどけいは、いかんせん目立ちます。どうにも隠しようがありません。
スケジュールどけいの人工知能(AI)は、融通かきかないあたりで高が知れています。そのレベルは命の存在を感じさせるドラえもんの足元にも及びません。
ドラえもんは良かれと思ってスケジュールどけいを使ったけれど、散々な目に遭って、結局は誰の得にもなりませんでした。猪突猛進すぎて使い物にならなかったのです。
コンセプトが良くても、使い物にならなきゃ意味がない。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、スケジュールどけいの優先度は星
つです。