今、あなたのデスクの引き出しからドラえもんが現れて、「ひみつ道具を一つだけあげる」と言われたらどうする?
もしも「あれもしたい。これもしたい」と悩めるなら、それは幸せな証拠です。だってなにか不幸に見舞われていたなら、悩むまでもなく、その問題を解決するひみつ道具を選ぶほかないからです。
ありふれた、でも深刻な不幸。それは健康を損なうことです。どれだけ健康な人だって、一年後にどうなってるかは分かりません。
どんな夢物語をひみつ道具で実現しても、健康でなければ楽しめないし、死んでしまえばそれまでです。
病気を治して健康になりたい。そのときひみつ道具を一つもらえるとしたら、さて、どれを選びましょう。
今も昔も、ドラえもんの生まれた22世紀も、病気を治すために薬が使われています。もちろん未来の薬は今あるものとはわけが違う。ひみつ道具の“どんな病気にもきくくすり(万病薬)”は、飲んで一晩寝ればどんな病気でもたちどころに治る薬です。
ただしドラえもんはどんな病気にもきくくすりを使う前にこう前置きしました。
いっとくけど、くすりはきかないこともあるんだよ。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』第3巻「ペロ! 生きかえって」より
ひみつ道具にしては、ずいぶん現実的な効力です。そうなると、飲み薬だし、外傷は治せないのかもしれません。ドラえもんからもらえるのは一つ、つまり4錠入り1ケースというのもまた現実的です。
「これくらいで手を打つべき」か「これじゃ物足りない」か。ひみつ道具が「未来の科学技術の産物」という禁断の果実であることを考えれば、答えは前者なのかもしれません。
ひみつ道具には未来の薬がほかにもあります。“お医者さんカバン”です。これの聴診器を身体に当てると、正確な健康状態がすぐさま判明して、病状に合わせた特効薬が飛び出てきます。
この薬は7回出せます。どんな病気にもきくくすりよりかは多い反面、こちらはドラえもんによると「簡単な病気」しか治せません。
それでもお医者さんカバンは有力です。検診機能を用いれば、あらゆる病気を早期に、そして正確に発見できます。日本人の死因の1位であるガン(悪性新生物)でさえ、早期なら現代の医学でも治療できる見込みがあります。
検診機能は何回でも行えるので、今現在の自分の健康だけではなく、大切な人たちの健康を将来にわたって守れます。
はたして飲み薬で外傷を治せるのか。いくら現代の常識が通じないひみつ道具でも、こればかりは疑念が残ります。
外傷を確実かつ完璧に治したいなら、選ぶべきひみつ道具は“タイムふろしき”です。時間の流れを局所的に変える風呂敷です。赤い面を外側にしてかぶせると時間が戻ります(新しくなる)。青い面が外側だと時間が進みます(古くなる)。
「時間」という宇宙の法則に介入するのだから、薬とはまさに次元が違います。肉体の時間を健康だった頃まで戻せば、どんな病気も絶対に治せます。
ただし時間操作ならではの難点もあります。当然ながら先天性の疾患は治せません。肉体が過去とまったく同じ状態に戻るため、ガンはおそらく再発するでしょう。
後者については、ガン保険に加入しておいて、その部位のガン検診をまめに受けて早期に治療することで、肉体的・経済的なダメージを最小限に抑えられます。
そして健康になってからも、割れた食器を直したり、傷んだ食品を新鮮にしたり、日常的にも活用できます。
もっと極端に、「永遠の若さ」を手に入れる? おっと、これに関しては話が長くなるので「ひみつ道具で永遠の命を手に入れたい」のほうをお読みください。
「ひみつ道具をもらえるなら、病気を治すだけじゃあもったいない。うんと現実離れした楽しみ方のできるやつが欲しい」
ごもっとも。それなら“もしもボックス”の出番です。この電話ボックスの受話器に「もしも○○な世界だったら」と告げると、その条件どおりのパラレルワールドへ移れます。
難病を治したいなら、その病気が簡単に治せるようになった世界へ。遊びたいなら、望みの妄想を実現した世界へ。
健康を取り戻せるばかりか、退屈とは無縁の刺激的な人生を送れます。
ドラえもんからひみつ道具をもらって夢見心地になったのもつかの間、交通事故に遭ったり、大病を患ったりして、現実に打ちのめされるかもしれません。
そんな有事に備えたい。でも夢も見たい。その双方を実現するには――というわけで、健康になりたい人におすすめのひみつ道具は、もしもボックスかタイムふろしきでした。