柔道を教えてやるという名目で、のび太はジャイアンからボコボコにされてしまいました。仕返しをしたいけど実力では敵わないと言うのび太のために、ドラえもんがしぶしぶ出してあげたひみつ道具が“ブラックベルト”です。
ドラえもんのブラックベルトは、柔道に強くなれる帯です。
柔道の黒帯を模したこの帯を締めると、接触した人を自動的に投げ飛ばすようになります。体格や筋力などを度外視して、誰が使っても、どんな相手でも、問答無用で投げ飛ばせます。
ブラックベルトを締めれば、対人の直接対決ではほぼ無敵です。とはいえ、人を投げ飛ばすことが正当化されるのは、自己防衛か格闘技の試合くらいです。
自己防衛に使う場合、性犯罪から身を守る防犯グッズとして効果を期待できます。問題は、着用者の意向にかかわらず効果が発動する点です。
ほんのすこし人に触れただけで勝手に体が動いて投げ飛ばしてしまうのでは、日常生活を送れません。なにかあってから帯を締め始めるのでは間に合わないでしょう。結局、防犯グッズとして使うのは無理筋です。
なんらかの理由で社会が機能不全に陥り、恐慌状態の人々によって略奪や暴行が蔓延するような非常事態ならば、ブラックベルトは無類の活躍を見せるでしょう。
投げ技が認められている格闘技の試合にブラックベルトを締めて出場すれば優勝間違いなし。自分の実力とは違う力で得た勝利にどれだけの意味を見いだせるかは、人それぞれ価値観しだいです。
人を投げ飛ばすのはとても危険な行為です。固い路面に倒した場合などは、相手が受身を取らなければ死亡する恐れすらあります。
相手がケガをしなくても暴行罪に問われます。無計画にブラックベルトを締めるのは、自分で自分の首を絞めるようなものです。
人がすし詰めで逃げ場がない場所、例えば満員電車で誰かにブラックベルトを締めれば、大混乱を引き起こせます。その代り余程うまく立ち回らなければ自分も巻き込まれますから、そう簡単には高みの見物とはいきません。
もちろん自分にブラックベルトを絞めて、気に食わない奴をボコボコにする使い方もあります。しかし自分が加害者であることが明らかなので、それ相応の報いを受けるでしょう。
人を投げ飛ばせば騒ぎは避けられません。しかしそこからブラックベルトの存在にたどり着かれはしないでしょう。締めるだけで体が勝手に人を投げ飛ばすようになる帯だなんて、荒唐無稽すぎて普通は考えもしないはずですから。
それはともかく騒ぎを避けられない時点でブラックベルトに秘匿性もへったくれもないことは確かです。
ブラックベルトが恐ろしいのは、着用者の意思にかかわらず体を強制的に動かすことです。さながら悪の組織が人間を無慈悲な戦闘兵器とするための装置のようです。
ブラックベルトが一本あったところでさしたる社会的影響はないけれど、もしも技術が解析できたなら、ろくでもない軍事技術に転用されるかもしれません。
効果の発動を制御できないブラックベルトは、使いどころが極端に限られてしまいます。でも軽くてかさばらないので、一種のお守りとして持ち歩くと心強そうではあります。
ということで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ブラックベルトの優先度は星
つです。