なかなかキャッチーなデザインなのに、なんのひねりもない名前をつけられているひみつ道具が“寝ぶくろ”です。その名のとおり寝袋(シュラフ)なのですが、ひみつ道具ならではの機能は一応ついておりまして……。
アニメ版など一部の媒体では「トゲつき寝袋」と呼ばれています。
ドラえもんの寝ぶくろは、水中用の寝袋です。水中で安全に眠れるように、サメよけのトゲと、位置を固定するイカリがついています。
水中用といっても、浸水を防いだり、空気を供給する機能は備えていません。水中で呼吸する手段が別途必要です。
ごつい見た目と裏腹に小さく折りたためます。
水中で寝るには、まずは息ができないと話が始まりません。だけどもスキューバダイビング器材のタンクでは空気が一晩持たないし、睡眠時にレギュレータのマウスピースから呼吸するのは無理があるというもの。
のび太が海底で寝ぶくろに入って寝たときは、水から酸素を取り出すひみつ道具の“エラ・チューブ”で呼吸しました。陸上と同じ感覚で息ができるエラ・チューブのような手段を持たなければ、水中で寝るのは自殺行為です。
ひみつ道具を一つだけしかもらえない条件下では、寝ぶくろを有効利用する術(すべ)がないでしょう。
水中で寝るのは危険がつきまといます。とはいえ、寝ぶくろはただの寝具なので、寝ぶくろ自体に危険性はありません。
サメよけになるほどのトゲは凶器になります。もっとも包丁やハサミのほうがよっぽど殺傷能力が高いでしょう。
かなり目を引くデザインですがそれだけです。しょせん寝袋なのだから隠す必要はありません。
寝ぶくろに備えつけられているイカリは、超小型にもかかわらず、高い把駐力(1)を持っていることが予想されます。このイカリを研究すれば、今あるイカリの性能を底上げできる可能性があります。
それでも、世の中に革命的といえるほどの変化をもたらすには至らないでしょう。
(1)イカリが水底とのあいだに生じさせる抵抗力。
もう「寝ぶくろ」という安易なネーミングからして、これが特別な存在ではないと言わんばかりです。ひみつ道具としての楽しげな雰囲気はあるけれど、それだけでは……。どのみち、ほかのひみつ道具もなければ寝ぶくろは活かせません。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、寝ぶくろの優先度は星
つです。