なにやらドラえもんが洗濯物を干しています。それが“四次元ポケット”だと気がついたのび太は、なにかあったときにひみつ道具を出してもらえないと困る、と自分勝手なことを言い出しました。
ドラえもんはというと、スペアがあるから大丈夫だと気にもとめません。そう、四次元ポケットには、スペアとなる“スペアポケット”があったのです。
ドラえもんのスペアポケットは、四次元ポケットのスペア(予備)です。二つは同じ四次元空間につながっているので、どちらからも物を出し入れできます。
スペアポケットが「ドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえるなら」で人気の答えなのは、これですべてのひみつ道具が手に入れられると思われているからです。
まずおさらいすると、四次元ポケットはひみつ道具の一つなので、「ひみつ道具を一つだけ」という条件でもらった場合は、残念ながら中身は空っぽです。それならスペアポケットをもらえばいい、というわけです。
ここでポイントになるのは、「四次元ポケットとスペアポケットのリンクは時間を越えるのか?」という疑問です。
さて、のび太たちが『桃太郎』の伝説を調べに“タイムマシン”で過去へ行ったときのこと(1)。運悪くタイムマシンが壊れてしまって、元の時代に帰れなくなりました。
もしもスペアポケットが時間を越えてつながっているなら、四次元ポケットに入ってスペアポケットから出れば(2)、簡単に元の時代に帰れます。
でもそうはしなかった。これはスペアポケットのリンクが時間を超えていないことの査証になるのではないでしょうか。
それになにより、時間を越えてつながると、それは「いつ」の四次元ポケットと「いつ」のスペアポケットなのか、という深淵(しんえん)な問題にぶち当たります。
「いつ」は「今」に決まってる? はたして時間を越えて「今」が成立するのでしょうか。
そもそも「今」とは知覚した途端に過去となる形而上の……、いや、やめましょう。時間の正体すら知り得てない我々現代人に答えは出せません。
そこで当サイトでは、「四次元ポケットとのリンクは時間を越えない」と仮定します。
ドラえもんがスペアポケットをくれたあと、未来へ帰るためにタイムマシンのある時空間へ入った瞬間、リンクは切れることになります。
そして、再リンクした際の整合性をとるため、リンクの切れているスペアポケットは、四次元空間にもつながらない、ただのポケットになるでしょう。
ほかのひみつ道具を手に入れることができないばかりか、四次元空間に収納するポケットとしても使えないとなると、有用性はほぼ皆無です。
(1)てんとう虫コミックス『ドラえもん』第9巻「ぼく、桃太郎のなんなのさ」において。
(2)四次元ポケットとスペアポケットのあいだで人が行き来できます(実例は大長編『のび太とブリキの迷宮』など)。そしてスペアポケットは、ドラえもんの寝床になっている押し入れにいつも隠してあります。
もしもスペアポケットへ手を入れているときにリンクが切れたら? 安全対策に無頓着なひみつ道具のことだから、腕を四次元ポケット側に持っていかれてしまっても、さもありなんとしか思えません。
その場合、腕を失うだけではなく、失血死する恐れがあります。
スペアポケットをくれたドラえもんがタイムマシンの時空間に入るまでには、わずかばかりの猶予があります。四次元ポケットへのリンクが生きているあいだに、ドラえもんのひみつ道具を盗み取ることも考えられます。
しかし、スペアポケットが初登場したエピソード「四次元ポケットにスペアがあったのだ」(コミックス第25巻収録)には、スペアポケットから物を取り出すと、その感触が四次元ポケットを介してドラえもんへ伝わる様子が描かれています。
スペアポケットを渡したすぐ後に感触が伝われば、勝手にひみつ道具を抜き取ったことが間違いなくバレます。
だいたいドラえもんを裏切るなんて『ドラえもん』ファンにあるまじきこと。よって当サイトでは、この手法を考慮しません。
ドラえもんと同じ時間軸にいないあいだのスペアポケットは、ただのポケットです。隠す必要すらありません。
四次元空間にアクセスできないのでは、なにも成し遂げられません。
「もしもひみつ道具を一つだけもらえたら」を妄想するならば、すべてのひみつ道具を手に入れる方法を考えるのではなく、一つに厳選してそこから夢を広げたい。
それに四次元ポケットへのリンクが切れているスペアポケットをもらっても宝の持ち腐れです。というわけで、スペアポケットの優先度は星
つです。