のび太といつもの仲間たちで集まって、紙相撲の大会を開いて遊びました。結果はのび太の一人負け。「のび太は紙相撲でも弱い」とみんなからバカにされる始末です。
悔しくて悔しくて、どうしてもみんなを紙相撲で打ち負かしたいのび太がドラえもんに泣きついて出してもらったひみつ道具が“ロボットペーパー”です。
ドラえもんのロボットペーパーは、自動で動くペーパークラフトを作れる紙です。この紙で実物の形に似せたペーパークラフトを作ると、本物みたいに動き出します。
チョウを作ればひらひらと空を飛び、ヤギを作れば草を食べ始め、車を作れば走り出し、紙相撲の力士を作れば相撲の稽古をし始めます。
サイズは幅が1メートルほどで、長さは巻かれているため不明です。ここでは5メートルと仮定します。
動力機関もエネルギー源も見て取れないペーパークラフトが動き出すだなんて、それはもう魔法そのもの。「どんな風に動き出すかな」と、いろいろな形を作ってみたくなる、とても夢のあるひみつ道具です。
のび太はロボットペーパーのヤギに除草をさせて、イヌを番犬にして、車で移動したりと、八面六臂(はちめんろっぴ)の働きをさせました。娯楽性だけではなく、実用性も兼ね備えています。
けれど明らかに現代の常識を超越した「魔法」を人に見せるわけにはいきません。実用は諦めて、自宅で一人で楽しむ使い方に限定されます。
それでも一人遊び好きのインドア派にとっては、とても優れた娯楽品となるでしょう。
紙相撲で負け続けて腹を立てたジャイアンがのび太のロボットペーパー力士を破こうとしたところ、逆に投げ飛ばされてしまいました。
ロボットペーパーの出力はかなりの高さです。攻撃的な題材、例えばイノシシなどを作ってしまうと、制御するのに手こずる羽目になるでしょう。題材選びには思慮が求められます。
攻撃的なロボットペーパーを人にけしかけるにしろなんにしろ、相手にロボットペーパーをなかば明け渡すことになります。これは秘匿しなければならないひみつ道具の使い方として悪手です。
それでもあえてロボットペーパーによる悪事を強行するだけの理由はありません。
小さなチョウをロボットペーパーで作って飛ばすくらいなら、「手品かな」と見過ごされるでしょう。
けれど手品のタネは知りたくなるもの。無駄に好奇心をあおると余計な詮索をされて、それが「あるはずのないもの」だと気がつかれるかもしれません。
大勢でわいわい遊ぶのがロボットペーパーの醍醐味(だいごみ)だとしても、人前に出すのは避けるべきです。
薄くて軽い上に、形に合わせてさまざまな作動をするロボットペーパーを応用できれば、宇宙開発に革新をもたらすでしょう。
とはいえこんな魔法と見分けがつかないような科学技術を現代の知識で解析するのは困難を極めます。社会を直接変えられる驚異的な代物がごろごろしているひみつ道具としては、いささか凡庸です。
ロボットペーパーに刺激されて発想力が活性化したのでしょう。のび太は次々と問題を打破する形をひらめきました。なかなか秀逸なひみつ道具だといえます。
ただし数あるひみつ道具から選び出す一つに見合うだけの「これしかない」という決め手は見出せません。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ロボットペーパーの優先度は星
つです。