ママにおつかいを頼まれたドラえもんとのび太は、どっちが行くかで揉めました。そこでドラえもんが「いいものがある」とひらめいて取り出したひみつ道具が“人間あやつり機”です。
一部アニメ版では「人間マリオネット」と呼称されています。
ドラえもんの人間あやつり機は、人体を操って、動作を自動化するひみつ道具です。
マリオネット(糸操り人形)のコントローラーによく似た本体から伸びる6本のロッドを、人の「手の甲・足の甲・頭頂部・腰」に装着します。そして本体の電子頭脳を起動すると、ロッドで操り始めます。
電子頭脳についている複数のボタンに一つずつ動作モードが登録されています。原作で確認できるモードは次の5種類です。
「お手伝い」は汎用モードです。このボタンを押してから口頭で指示を出すと、それに従います。
挙動が不安定なのに加えて、出力が必要以上に高いのが欠点です。
人体以外に装着した場合の挙動は不明。当サイトでは「人間あやつり機は人体しか操れない」と仮定します。
ドラえもんによると「ねむったままでもはたらけるから、つかれないよ」(1)とのこと。
けれどコンピューター制御ですべての動作が自動化されたら、それはもうロボットです。それなら初めから人型ロボットにすればいい話。
人体を機械で動かすなら、人の動作に追従してアシストする、いわゆる「パワードスーツ」であるべきでしょう。
動作を大雑把に指示したあとはなすがまま、しかも挙動が不安定な人間あやつり機には実用性を期待できません。
(1)てんとう虫コミックス『ドラえもん』第9巻「人間あやつり機」より。
人間あやつり機はじつにぞんざいなひみつ道具です。
例えば「マラソン」を選択すると、ゴール地点も定めずにあてどもなく猛スピードで走り続けます。「プロレス」だと、近くにいる人を手当たり次第に攻撃します。
常にフルパワーで作動することも相まって、ケガ人が出ること必至です。
人間あやつり機を人に着けようとすれば、間違いなく気づかれます。無理やり着けても簡単に取り外されてしまいます。人間あやつり機で人を支配しようとしても徒労に終わるだけです。
残る悪用は、自分に装着して「プロレス」モードで人をなぎ倒すくらいでしょうか。
なんにせよ、細かい制御がきかない人間あやつり機は騒ぎをいたずらに大きくするだけです。悪事には向いていません。
人間あやつり機を装着した姿はなかなか奇抜で悪目立ちします。
その代わりに「おかしな格好をした人が、おかしなことをしている」だけだと問題が矮小化(わいしょうか)されて、「未来から時を越えてもたらされたひみつ道具」という真相から遠ざかりもするでしょう。
ともあれ秘匿性とは縁遠いひみつ道具です。
パワードスーツの類いは福祉用具から軍事まで、広く需要がある分野だけあって開発が進められており、すでに人間あやつり機を超える部分も出てきました。
それでも人間あやつり機には華奢(きゃしゃ)なフレームとは裏腹な高い強度と駆動力、そして超小型であろうエネルギー源という未来ならではのテクノロジーが見受けられます。
ほとんど魔法のような摩訶不思議なひみつ道具とは違って、機械であることが明らかな人間あやつり機なら、現代の科学力でも解析可能でしょう。
そして人間あやつり機のテクノロジーは、社会のバランスが崩れるような急激過ぎる技術革新をもたらすほどのものではなく、「未来から時を越えて輸入するテクノロジー」として手頃に思えます。
もしも人間あやつり機をもらったら、いさぎよく公的機関に提供するのも一つの選択かもしれません。
自分の意思とは無関係にマリオネットがごとく操られるだけなんてまっぴら。人間あやつり機は外骨格型パワードスーツの構造をもっているだけに、意思追従タイプでないのがなんとも惜しいひみつ道具です。
意思に追従しなくても、モードが選べれば十分? いやいや原作を読めば絶対に気が変わります。そう断言できるほど人間あやつり機の電子頭脳はずさんです。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、人間あやつり機の優先度は星
つです。