ジャイアンを怒らせてしまったのび太がドラえもんに泣きつくのは毎度のことだけど、対策に使うひみつ道具はそのたび違います。“N・Sワッペン”はその一つ。ドラえもんによると、これを使えばジャイアンと顔を合わせなくて済むらしい。
さて、どんなひみつ道具なのでしょうか。
ドラえもんのN・Sワッペンは、貼られた人同士が、磁石のように反発したり引き合ったりするようになるワッペンです。「N」と「S」の2種類あって、同じマークだと反発して、違うマークだと引き合います。
N・Sワッペンを手に持っているだけでは効果は生じません。N・Sワッペンの付いた服を脱いでも効果は止まります。あくまで身に着けているあいだだけ機能します。
これらの効果は、心理的なものではなく、物理的な力です。効果範囲はおよそ2メートルです。
原作エピソードでは、ドラえもんはN・Sワッペンをたくさん持っていました。よって、「N」と「S」を4セット、計8枚もらえるものとします。
のび太はN・Sワッペンを使ってしずかちゃんを自分にくっつけようとしました。でも気持ちが伴わないで体だけくっついても、嫌がられるだけです。(ちなみに、のび太の試みは未遂に終わりました)
くっつきたい気持ちがお互いにあれば、N・Sワッペンを使うまでもないのだから、引き合う力が有用なケースはとても限定されます。
有用なケースは例えば、赤ちゃんをだっこするとき。突発的な出来事で赤ちゃんを落としてしまう事故を防げます。
反発する力は、護身に役立ちそうです。普段から自分にN・Sワッペンを貼りつけておいて、襲われたときに相手へ同じマークのN・Sワッペンを貼りつければ、絶対に近寄られません。
N・Sワッペンを剥がされてしまえば終わりですが、相手がその仕組みに気づく頃にはコンビニなどに逃げ込めているでしょう。
同じマークのN・Sワッペンを貼りつけた人同士が、無理やり近づこうとすると、勢いよくはね飛ばされることがあります。その場合、ケガは免れません。
自分に貼ったのと同じマークのN・Sワッペンを憎い人にこっそり貼りつけて、相手がホームにいるとき、電車が来るタイミング近づけば……。目撃者の目にも、防犯カメラの映像にも、自ら飛び込んだようにしか映らないでしょう。
N・Sワッペンは1枚では効果が生じないので、被害者の服に無傷で残っていても、それが特殊なワッペンだと見抜く人がいるとは思えません。犯行が明るみに出ることはないのです。
効果が生じていないN・Sワッペンはただのワッペンと区別がつきません。しかし、ひとたび効果が生じれば見えない力で押されたり引っ張られたりと明確な作用があるため、ワッペンとの因果関係に感づく人も少なからずいるでしょう。
効果は隠しようがないので、せめてN・Sワッペン自体は見つからないように、人に貼りつけるときは細心の注意を払う必要があります。
重力や磁力は、日常で意識することがないほど、あまりに当たり前のように存在していているけれど、この世の根幹をなす仕組みの一端です。
それらの力を操っているであろうN・Sワッペンは、印象よりも革命的なひみつ道具なのかもしれません。
けれどこれで社会に変革をもたらせるかというと、それはまた別の話です。
今より毎日が楽しくなる。という妄想がN・Sワッペンからはさほど広がりません。せっかくもらっても、使わずじまいになりそう。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、N・Sワッペンの優先度は星
つです。