吸血鬼に憧れを抱き、自分もなりたいと願っている人は(特に欧米に)多くいるようです。その一方、ライバル的存在の人狼は、毛むくじゃらの見た目がネックなのか、吸血鬼程には憧れを聞きません。
それでも中には人狼になりたいという奇特な人もいることでしょう。“月光とう(月光灯)”は、そんな願望をかなえるひみつ道具です。
月光とうは、人間をオオカミに変身させる光線を出すひみつ道具です。ドラえもんによると「未来の国の子供たちが、オオカミ男ごっこに使うライトだよ」(1)とのこと。
変身後の姿はオオカミそのものですが、手で物を握れたり、二足歩行できるなど、骨格は多少異なるようです。また、変身中は本物のオオカミと話せるようになります。
効果は一定時間で切れて、自動的に変身が解けます。月光とうが登場する原作エピソード「オオカミ一家」の時系列から、効果時間は30分から1時間くらいだと推定されます。
(1)てんとう虫コミックス『ドラえもん』第2巻「オオカミ一家」より。
いろいろな動物に変身できるひみつ道具の“動物ライト”と比べて、月光とうの優位性はオオカミと会話ができること一点に集約されます。しかしニホンオオカミはとうに絶滅していて、現在では動物園に他種のオオカミが飼われているにとどまります。
動物園の飼育員でもない限り、月光とうが活躍する機会はありません。
変身した姿を人に見られたら、オオカミとわかっても野犬と間違われても、通報は避けられません。万が一捕獲されてしまうと、今度は変身が解けるさまを見られて人狼だと勘違いされるでしょう。
人狼は、呪われた存在として伝承で忌み嫌われてきました。噂が広まれば、いったいどうなることやら。無事では済まないかもしれません。
オオカミの姿で人の喉を食いちぎったら、そしてその現場を防犯カメラに撮られていたら……。防犯カメラの映像が決定的な証拠となって、それが人間の犯行だとは疑われもしないはず。
ただし、オオカミの体は特別強力でもないので返り討ちに遭うかもしれません。また、変身の過程を撮られる(見られる)と元も子もないにもかかわらず、変身を任意のタイミングで解けないという問題も残ります。
結局、正体が発覚するリスクを抑えるには綿密な計画が必要です。悪用度は、人狼のイメージ程には高くないでしょう。
住宅地では野犬ですら騒ぎになるのに、オオカミが出没したとなったら取材陣まで集まる大騒ぎになると予想されます。秘匿性はないに等しいでしょう。
「オオカミ一家」では、ニホンオオカミはかなりの知性を持っているように描かれていました。オオカミと会話したならば、人間の思い上がりをへし折る想定外の発見があるかもしれません。
これが公になれば、獣であるオオカミと人間との垣根が壊され、宗教をはじめとするさまざまな思想に大きなインパクトを与えることが予想されます。
なんだか人狼になると、楽しいことよりも、面倒なことが多そうです。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、月光とうの優先度は星
つです。