ドラえもんをなんとか自分のロボットにしようと考えたスネ夫は、悪知恵を働かせて、手始めにドラえもんと親友になれるひみつ道具を嘘の理由をでっち上げて借り出しました。そのひみつ道具が“友情カプセル”と“コントローラー”です。
友情カプセルとコントローラーは、人の友情を操るひみつ道具です。このカプセルを体に付けられた相手は、コントローラーを持っている人に対する激しい友情が芽生えて、どんなことでも一生懸命に尽くしたくなります。
その友情は、友情カプセルを体から外すと消えてなくなる一時的なものです。
友情カプセルはハート形で大きさは1.5cmほど。一つだけなので、同時に二人以上には使えません。吸着機能はなく、作中ではセロハンテープで相手の体に付けました。
草履(ぞうり)の靴底に友情カプセルが付いたときにも効果は生じました。このことから、肌に直接付けずに着衣にでも、例えばポケットに入れても発動条件を満たすと推定されます。
また作中では明確にされないものの、「コントローラー」というくらいなので、効果のオンオフを操作できるものとします。
ひみつ道具の助けを借りなければ友情が芽生えない相手と無理やり友達になったところでむなしいだけです。
そもそも人の心を身勝手に操るのは倫理的に問題があり、有用とはいえません。
友情カプセルを相手から外すか、コントローラーでオフにすればいつでも効果を消せるので、仮に問題が起こっても大ごとになる前に収束させられます。
友情を盾にとって自分の都合よく相手を使うのは、褒められたことではありません。それが機械的かつ一方的に生み出した友情ならことさらたちが悪い。逆にいえば、友情カプセルは悪人にとって重宝な道具となります。
借用書を交わさずにお金を貸した場合は、法的に返済させるのが難しく、泣き寝入りになることが大半です。友情カプセルで作り出した仮初め(かりそめ)の友達からお金を借りれば、労せずして踏み倒せるでしょう。
仮初めの友達はかなりの忠誠心を見せるので、借金だけではなく、さまざまな使い走りに使えます。
ただし、対象者を変えるために友情カプセルを回収したり、友情カプセルを付けた服を脱がれると効果が切れて我に返ります。友情がなくなれば、あとには恨みしか残りません。
結局は、恨みを買っても平然としていられる根っからの悪人でなければ悪用できないでしょう。
肌に直接貼り付けると違和感を与えてしまうので、着衣にこっそり忍び込ませるのが基本となります。友情カプセルの小ささなら、上着のポケットにでも入れ込めば、そうそう気づかれないでしょう。
もしも相手に友情カプセルを見つけられたとしても、そのハート形の小物が友情を操る未来の道具だなんて思いも寄らないはず。
効果が生じているあいだは、コントローラの持ち主を無条件に信頼しているので、友情カプセルの回収もたやすいことです。
人の感情を言葉巧みに操る人物の存在は知られています。革命は得てしてそういった人物によって扇動されて起こるものです。
しかし人の感情を操る機械となると、今のところ――少なくとも表向きは――実用化されていません。
想定される倫理的問題や社会的影響力の大きさからいって、実現しても公表されはしないでしょう。それほど友情カプセルは革命的です。
SNSの普及によって「ぼっち」を忌避する「リア充」が台頭した反面、ぼっちを前向きに楽しむ「ぼっち充」も肯定され始めました。
なんにせよ、友達は自然の成り行きで成立するものであることに変わりありません。
自分が使われることを想像すると甚だ(はなはだ)不愉快な友情カプセルは、この世にないほうがいい。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、友情カプセの優先度は星 つです。