大長編で目覚ましい活躍を見せるひみつ道具といえば“空気砲”です。しかしこの空気砲、元はといえば未来から逃亡してきた犯罪者の持ち物という形で登場したひみつ道具でした。それだけになかなか物騒なひみつ道具です。
てんとう虫コミックス第4巻「未来世界の怪人」で初登場した際は、「空気ほう」と表記されていました。本稿では、再登場以降の表記「空気砲」を採用しています。
ひみつ道具の空気砲は、空気の砲弾を打ち出す大砲です。大砲の砲身を切り取ったような筒状の形状で、手の平にはめて「ドカン」と発声すると、空気の塊(かたまり)を砲口から発射します。
その威力は、ドラえもんによると「高が知れたもの(=大したことはない)」とのこと。しかしながら大長編『のび太とアニマル惑星(プラネット)』では、空気砲の集中砲火で敵のUFOを撃ち落としました。
BB弾を発射するエアソフトガンでは、どれだけ一斉射撃したとしてもUFOを撃ち落とせるとは思えません。空気砲の威力はおもちゃの域を超えています。あくまで「兵器としては」高が知れているだけで、そのじつ攻撃力はかなり高いようです。
作中では「ドカン」と発声せずに空気砲を撃つ描写も多く見られますが、これは演出上の問題と解釈し、本稿では音声認識以外の発射方法はないものとします。また便宜上、エネルギー切れはなく無制限で撃てるものとします。
日常生活において武器が正当に活躍するほぼ唯一の状況は、危険から身を守らねばならない必要に迫られたときです。
しかし空気砲は、普段から持ち歩く護身グッズにしてはサイズが大き過ぎます。また威力が強すぎて、過剰防衛に問われる恐れがあります。
そもそも銃社会であるアメリカの現状を見れば、銃が威力を発揮するのは護身ではなく犯罪なのは火を見るより明らかです。『ドラえもん』の作中でさえ、空気砲が活躍するのは大長編で戦闘状態に陥ったときくらいです。
もちろん平穏な日常は恒久的に続くとは限りません。もしも戦闘に巻き込まれたなら、空気砲はその威力を存分に発揮するでしょう。
銃の誤射で負傷者や死者が出る事故は後を絶ちません。殺傷能力が低い空気砲であっても、使い方を誤れば被害が出ることに変わりはありません。空気砲が武器である以上、その取り扱いには細心の注意を払うべきです。
空気砲1発の直接ダメージでは致命傷に至らなくても、高齢者を撃ってケガをさせると、そのまま寝たきりになる可能性があります。若くて健康な人相手でも、空気砲を連続して撃ち込めばひとたまりもなく倒せるでしょう。
走行中のバイクや自転車を狙って撃てば転倒させれられます。周囲の車両を巻き込んで大事故になるかもしれません。
とにもかくにも空気砲で人を撃つのは犯罪です。悪知恵を働かせるまでもない、極めて暴力的なひみつ道具だといえるでしょう。
武器の類いはとても人目を引きます。その上、空気砲を撃つには「ドカン!」と発声しなければなりません。空気の砲弾は目に見えないとはいえ、空気砲を人前でバレずに使うのは難しいでしょう。
特に空気砲は多くの人に知られている定番のひみつ道具ですから、所有していることを隠すには人に見られないようにする慎重さがより一層求められます。
空気砲の作動原理は、サイエンスプロデューサーのでんじろう先生によって有名になった実験の「段ボール空気砲」とさして違いがないように思えます。
空気ほうを作ろう - ワオ!科学実験ナビ
威力も速度も比べものにならないとはいえ、まるきり非現実的だとは断定できません。もしも空気砲が現実のものとなっても、世界に特別な変化をもたらすには至らないでしょう。
空気砲をドカンドカンと撃つのは気持ちよさそうです。でもそんな爽快感のほかに得られものが思いつきません。爽快感だけでは、数あるひみつ道具の中から選び出す理由にはならないというわけで、空気砲の優先度は星
つです。