もしも「ほんもの図鑑」をもらったら

「メガネザルそっくりだ」とスネ夫にからかわれて、のび太はみんなから笑われてしまいました。けれども肝心のメガネザルを見たことがないのび太はピンときません。そこでドラえもんが取り出したひみつ道具が“ほんもの図鑑”です。

機能と効果

ドラえもんのほんもの図鑑は、本物を見られる図鑑シリーズです。

ページを開いて裏から表紙を叩くと、そこに掲載されている写真が本物になって飛び出します。たとえばライオンの項目だったなら、出てくるのは正真正銘の生きているライオンです。

本物を出した項目は図の部分が空になります(見出しと解説文は残る)。ほんもの図鑑から出たものにそのページを押し当てると写真に戻って、項目が復元します。

写真にするのは、ほんもの図鑑から出たもの自体でなくても構いません。原作エピソードで食べ物の巻に収録されていたスイーツをジャイアンが勝手に食べてしまったときは、ケーキ屋で買い直したものをほんもの図鑑へ戻しました。

はじめから項目がなかったものにほんもの図鑑のページを押し当てた場合は、新たに項目が作成されます。

原作エピソードに登場した下記の12巻を1セットとしてドラえもんからもらえるものとします。

有用性: ★★★☆☆

ほんもの図鑑をもらったなら、それはつまり掲載されているものすべてを手に入れたことにほかなりません。これはもう単純にお得な話です。

なかでもクラシックカーの1915年式T型フォードなどが収録されている「乗り物図鑑」はマニア垂涎の一冊。乗り物に興味がなくても、それらの市場価格を考えれば食指が動くでしょう。

また、動物などの生きものが生存したまま、ケーキなどの生ものが新鮮なまま、収録されている点も見逃せません。これはほんもの図鑑に入っているあいだは経年変化がいっさい生じない、つまり時間が止まっていることを意味しています。

この特性と「項目がないものでも新規登録できる」という機能があいまって、ほんもの図鑑には「時間を凍結した保存」という裏ワザ的な用途もあります。いわゆる「コールドスリープ」です。

コールドスリープは恒星間航行だけではなく、臓器移植を順番待ちしていられるリミットが切迫したときなど、身近に起こり得る事態でも活路を開く手段となります。

もっと手近に、貴重品入れとしても使えます。厚手の本をくりぬいて作ったシークレットボックスは、ページをめくられてしまうと一発でバレてしまいます。けれど写真化されるほんもの図鑑なら、それが本物だと気づかれることはまれでしょう。

本来の目的である図鑑としては、危険生物をうっかり出してしまう危険を踏まえると、意外とよしわるしかもしれません。

危険性: ★★★☆☆

「動物図鑑」には猛獣も収録されています。大型の肉食獣にしてみれば、我々人間は食物であることを忘れてはなりません。

肉食獣のほかにも危険生物はたくさんいます。原作エピソードではスネ夫が「大昔の生きもの図鑑」からマンモスを出してしまって大騒ぎになりました。

「オバケ図鑑」の魑魅魍魎(ちみもうりょう)を世に放ってしまったら、いったいなにが起こるのでしょうか。

とにもかくにも、ほんもの図鑑から無暗に本物を出すと命を落としかねません。なかなか取扱注意のひみつ道具です。

悪用度: ★★★★☆

ほんもの図鑑には人間ですら新規に収録できます。そしてほんもの図鑑から自力で脱出するのは不可能です。気に食わない人をこの世から消し去るのにこれ以上ない手段でしょう(“独裁スイッチ”は実際には人を消しません)。

収録する瞬間さえ目撃されなければ真実は永遠に闇の中、さながら「神隠し」です。被害者はいちおう生きているので、殺人よりも実行する抵抗感が薄く、ほんもの図鑑の所有者は魔が差しやすいかもしれません。

そのほかにも、密輸入や犯罪の証拠隠滅など、悪用方法は多岐にわたります。

秘匿性: ★★★☆☆

太古に絶滅したはずの生きもの、物語に登場する架空の人物、科学的には存在を否定されている魑魅魍魎、それらが世に現れたら世界的なニュースになるのは避けられません。

基本的には、手に負えないものは出さずに、一人でこっそり楽しむのにとどめるべきでしょう。

革命度: ★★★★☆

ほんもの図鑑をコールドスリープ装置として応用すれば、人類が火星、ひいては太陽系外へ進出する足掛かりになり得ます。

空想上の存在を現実のものとする「お話図鑑」と「オバケ図鑑」は、これまでの常識をひっくり返します。

クローン技術は日々絶えず進歩しています。「大昔の生きもの図鑑」があれば、テーマパーク『ジュラシック・ワールド』が実現するのも時間の問題でしょう。

映画『ジュラシック・ワールド』予告編

これらはほんもの図鑑の存在を世に明かしたらの話。ひみつ道具は現代にあってはならないものばかり、たとえドラえもんからもらったとしても秘匿するべきです。しかしほんもの図鑑を公にするのはさほど悪いシナリオではないかもしれません。

まとめ

ほんもの図鑑ならではの「オバケ図鑑」と「大昔の生きもの図鑑」は、おいそれと本物を出すわけにはいきません。それ以外となると、動物園や水族館や博物館へ行けばだいたい見られます。

結局、個人でもらっても持て余すだけかなぁというわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ほんもの図鑑の優先度は星1.5つです。

道具名称:
ほんもの図鑑
原作初出:
『ドラえもん』第6巻「ほんもの図鑑」
カテゴリ:
「ほ」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第6巻 / 生きもの
公開日:
2016年04月05日

あわせて読みたい

広告