「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」感想

大人になってから漫画『ドラえもん』をきちんと読み返したことがある人は、わりかし少ないように思えます。それは本当にもったいないことだと、一度でも読み返した人なら知っているはず。

児童漫画とあなどることなかれ。『ドラえもん』は子共たちへ向けて描かれた漫画であることは確かだけれど、藤子・F・不二雄先生(以下「F先生」という)のほとばしる才気が児童漫画という枠組みを突き破っているさまに改めて驚かされるのだから。

そもそもF先生が手掛けた作品群は綺羅星のごとく並ぶ傑作ばかり。青年誌やS-Fマガジンに掲載されていた『SF・異色短編』シリーズは、大人向けの物語も描けることを知らしめる名作です。

ちょっと思い入れが強すぎて、ついつい前置きが長くなりました。そんなこんなで胸を高鳴らせて「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」を(2014年10月に)訪れました。

入館チケットとアクセス

宿河原駅前のローソンはファサード看板が藤子・F・不二雄仕様になっています。

入館チケットは藤子・F・不二雄ミュージアムでは販売しておらず、ローソンでしか購入できないので注意が必要です。

藤子・F・不二雄ミュージアムは完全予約制。日時が指定された入館チケットを事前に購入しておく必要があります。ローソン店頭のLoppiでは残券がある限り入場時間まで当日券を販売しているものの、土日や祝日はまず残っていません。

ちょっとだけハードルが高い分、チケットさえ買ってしまえば当日の混雑状況を気にしなくて済むのがメリットです。

藤子・F・不二雄ミュージアムへのアクセスで一番楽なのは、小田急線およびJR南武線の登戸駅から有料シャトルバスに乗ること。ミュージアムに駐車場はなく、公共交通機関の利用を推奨しています。

シャトルバスは藤子・F・不二雄仕様のかわいい車両ですし、子供連れならこの行き方一択でしょう。

今回はお散歩がてら、JR南武線の宿河原駅から徒歩で向かいました。所要時間およそ15分の行程は、お花見スポットでもある二ヶ領用水沿いのボードウォークを通過したり、キャラクターモニュメントがあったりで、気分良く歩けるコースでした。

周辺のキャラクターモニュメント

ドラえもんたちのレリーフを発見。

最寄り駅の登戸駅と向ヶ丘遊園駅と宿河原駅から藤子・F・不二雄ミュージアムまでの道のりには、あちこちにキャラクターモニュメントが設置されています。ちなみにキャラクターモニュメントには、レリーフと銅像の2タイプがあるみたい。

到着! 窓枠の秘密

赤枠でくくった窓枠にはちょっとした秘密が……。

さて、ようやく本題の藤子・F・不二雄ミュージアムに到着です。一見お堅い外観だけど、窓枠が漫画『ドラえもん』の第1話「未来の国からはるばると」のコマ割りと同じレイアウトになってる! お手持ちの単行本と見比べてみてください。

さすがにこれは教えてもらうまで気がつきませんでした。この窓枠以外にも、F先生の著作に倣っているデザインがたくさんあるから、展示物以外も要チェックです。

いよいよ入館です。入館チケットの指定時間から30分以内に入館しないといけないので遅刻厳禁です。まずはエントランスで注意事項などの説明を聞いてから、「おはなしデンワ」と「Fシアター入場キップ」を渡されました。

おはなしデンワとFシアター入場キップ

どんなFシアター入場キップがもらえるかな?

映像展示室の入場券であるFシアター入場キップには、さまざまなデザインが用意されています。どんなデザインがもらえるかは運しだい。今回もらったのは、パーマン1号のキップ。連れは、複数のキャラが電車ごっこをしているキップでした。

おはなしデンワとは、要するに音声ガイドです。いきなり無料で渡されたので驚きました。いままで訪れたどの美術館(博物館)でも、音声ガイドは別料金でしたから。

これでチケット料金が1,000円(大人)だなんて良心的!

展示室Ⅰ

エントランスを抜けると、まずは「展示室Ⅰ」です。ここからは撮影禁止なので写真はありません。展示室ⅠはF先生の直筆カラー原稿を中心に展示されていました。

原稿の魅力とおはなしデンワの解説とが相まって、のっけからかなりの滞在時間を費やしました。いやあ素晴らしい、藤子・F・不二雄ミュージアム。

ヒストリーロード

展示室Ⅰを出ると、F先生の年表が刻まれた長い廊下の「ヒストリーロード」を通ることになります。知ってるようで知らなかったF先生の来歴を、あらためて知ることができました。

年表をなぞりながらヒストリーロードを進んで行って、F先生が亡くなられた項にたどり着いたとき、思わず涙がこぼれました。

F先生が逝去されたあとも年表は続きます。終点は2112年、ドラえもんが誕生する年です。気がつけば、もう100年を切りました。ドラえもんが誕生するのはそう遠い未来ではありません。

先生の部屋

ヒストリーロードがたどり着く先は「先生の部屋」です。F先生が実際に愛用してした仕事机を中心に仕事場を再現してあります。

仕事道具だけではなく、F先生の自宅から運び込まれた蔵書をはじめとする膨大なコレクションも展示されています。その数なんと約1万点とのこと。

先生の部屋は吹き抜けになっていて、これでもかというくらいぎっしり本が詰まった本棚が天井まで続くさまは圧倒的です。

これらのコレクションたちは、アイデアの源泉になっていたはず。F先生の創作の秘密を垣間見られてなんとも感慨深いコーナーでした。

どうぶつたちの部屋

先生の部屋に後ろ髪を引かれつつ2階へと階段を上ると、そこは「どうぶつたちの部屋」でした。

動物をモチーフにした切り絵が展示されています。藤子・F・不二雄ミュージアムに展示されるまで世に出ていなかった作品なんだとか。

この切り絵をもとに作られたゾウ🐘とワニ🐊のオブジェ(結構大きい)も飾られています。こーれーはーかわいい。自然と頬が緩みます。

展示室Ⅱ

どうぶつたちの部屋から“どこでもドア”(を模した出入り口)をくぐった先は「展示室Ⅱ」です。展示室Ⅱは企画展示コーナーで、今回は「ドラえもん名作原画展 ミュージアムセレクション2014」が開催されていました。

全部で何話分が展示されていたのかな? 面白くってついつい全部読んじゃいました。すごいな、藤子・F・不二雄ミュージアム。切りがありません。

展示室Ⅱで現在どんな企画が開催されているかは、「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム公式サイト」で確認できます。

きこりの泉

きれいなジャイアン現る。

展示室Ⅱに併設された休憩コーナーから出たバルコニーには「きこりの泉」が鎮座しています。あの「きれいなジャイアン」がお出迎えしてくれました。ひみつ道具の“きこりの泉”に落ちてしまったジャイアンの代わりに現れた超人気キャラです。

このコーナーは撮影OK。ただしすごい人気で、正面からきれいなジャイアンと一緒に記念撮影するには列に並ばなくてはなりませんでした。今回は斜めからきれいなジャイアンだけをパシャリ。

先生のにちようび

展示室Ⅱへ一旦戻って順路を進むと、屋内展示エリアを締めくくる「先生のにちようび」に出ます。漫画家としてではなく、家庭人としてのF先生にスポットを当てたコーナーです。

F先生ゆかりの品が展示されていて、これまたジーンときました。

まんがコーナー

おはなしデンワを返却して、屋内展示エリアを出た先は「まんがコーナー」です。まだまだ藤子・F・不二雄ミュージアムは終わりません。ここから先に順路はなく、自由に観て回れます。また、写真撮影も解禁されます。

F先生作の漫画を好きなだけ読めるまんがコーナーでは、子供たちが夢中になって読み漁っていました。座れるので、休憩がてら『ドラえもん』の「きこりの泉」を再読。『ドラえもん』屈指の爆笑エピソードだから、未読なら是非読むべき!

「きこりの泉」は、てんとう虫コミックスなら第36巻、藤子・F・不二雄大全集ならドラえもん16に収録されています。

ドラえもん (36) (てんとう虫コミックス)
タイプ:
コミック
著:
藤子・F・不二雄
発売元:
小学館

みんなのひろば

まんがコーナーのお隣「みんなのひろば」は、さわって遊べる展示物やガチャガチャがあります。こちらも夢中になった子供たちがいじり倒していました。やっぱり屋内展示エリアの観るだけの展示物って子供にはすこし退屈ですよね。

キッズスペース

ひみつ道具をモチーフにした木製の玩具で遊べるらしいけど、未就学児限定なので立ち寄りませんでした。

Fシアター

エントランスで受け取ったFシアター入場キップを使うときが来ました。Fシアターに到着です。Fシアターは200インチスクリーンを備えた映像展示室で、ここでしか観られないオリジナルの短編アニメを上映しています。

上映作品は定期的に入れ替わりますが、どれも藤子・F・不二雄ワールドのキャラが作品の垣根を超えて共演するクロスオーバー作品のようです。今回は『ドラえもん&チンプイ エリ様 愛のプレゼント大作戦』でした。

さてこのFシアター、入場口とは違う場所から中庭へ出るのですが、その方法が面白かった。出口がどうなってるかは見てのお楽しみ!

はらっぱとピースケの池

ピー助だ!

のんきなパーマンたち。

中庭から3階へ上がると屋上庭園の「はらっぱ」と「ピースケの池」が広がっていました。キャラがいっぱいいる絶好の記念撮影スポット! ここは屋根がないから、藤子・F・不二雄ミュージアムへは晴れてる日に行くのに越したことはありません。

ミュージアムカフェ

3階の屋内部分は「ミュージアムカフェ」。藤子・F・不二雄作品にちなんだオリジナルメニューが楽しめるカフェです。とにかく混雑していて待ち時間が長かったので、今回は入店を諦めました。食事を入館前に済ませておいて良かった……。

藤子・F・不二雄ミュージアムに入館したら、まずはミュージアムカフェへ行って予約番号をもらっておくと並ばずに入れるようです。順番はスマホで確認できるそうなので、予約番号さえもらえばあとはゆっくり展示を観られるみたい。

参考: カフェにもあのひみつ道具が! - ミュージアム公式ブログ

次回はあらかじめ順番を取って、さくっとミュージアムカフェに入店してやる!

ミュージアムショップ

楽しかった藤子・F・不二雄ミュージアムも、あとはオリジナルグッズを販売している「ミュージアムショップ」を残すだけとなりました。このオリジナルグッズがまたかわいいこと! 物欲をそそられまくりです。

気分が盛り上がっているから、おみやげを山ほど買って散財してしまう人も多いことでしょう。でも家に着いてから冷静に見ても後悔しない、本当にかわいいグッズばかりでした。

まとめ

登戸駅ではドラえもんの銅像モニュメントがお見送り。

入館から退館するまでにかかった所要時間は約3時間。まさしく時を忘れて楽しめました。藤子・F・不二雄ミュージアムは、隅から隅まで面白くて充実感が半端ない、愛のある美術館だという感想です。

ここを「ドラえもんミュージアム」と呼ぶ人もいるけれど、『ドラえもん』に限らずF先生の世界をまるっと体験できるミュージアムでした。

メインとなる屋内展示エリアは大人向けな印象です。でも、子供が生まれて初めて行く美術館として完璧だとも思いました。絶対良い情操教育になるはず。

一人でも家族とでも友達とでも恋人同士でも、オールラウンドに使えるお出かけスポットではないでしょうか。口コミの評判が高いのも納得です。

ということで、藤子・F・不二雄ミュージアムの満足度は文句なしに星5つです。子供の頃に『ドラえもん』を読んだっきりだなんてもったいない! F先生の世界は底知れないから、新たな発見がきっとあるはずだから。

タイトル:
「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」感想
カテゴリ:
雑記
公開日:
2015年06月26日

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