もしも「よかん虫」をもらったら

些細なことで後ろ向きになるのび太にあきれたドラえもんは、「笑う門には福来る」だと言って、気の持ちようの大切さを諭しました。

それでものび太は考えを改めなかったのに、「今週は幸運に恵まれる」という占いを読んだ途端にコロッと前向きになりました。

それに気をよくしたドラえもんがのび太に貸してあげたひみつ道具が“よかん虫”です。

機能と効果

ドラえもんのよかん虫は、予感を現実のものにする虫型ガジェットです。

なにか予感がしたら、この虫が飛んできて頭にとまります。そうすると予感した出来事が本当に起こります。

偶発的でない自発的な予感でも構いません。

ただしその予感が具体的であること、現実に起こり得ること、そしてそれを強く信じていることが必須条件です。

有用性: ★★★☆☆

よかん虫を使いこなすには、悪い予感は1ミリも頭に浮かばせずに、好ましい予感だけをひたすら思い描ける研ぎ澄まされた集中力が求められます。

でもそんな大それたセルフコントロールができるのは超人だけです。凡人は「今から考えたことが嫌でも現実になります」と言われたら、雑念が湧いてしまうでしょう。

思考を完全にコントロールできたなら、不安や緊張を抑制して、自信と集中力をもって何事にも挑めます。

そんな胆力があれば、よかん虫なんてなくたって、自分の力で想いを現実にしていけるでしょう。なんとも皮肉な話です。

よかん虫で能動的に物事を実現するのは潔く諦めて、とても前向きな気持ちのとき、いい意味で調子に乗っているときだけ、気分まかせで効力を発動させるのが現実的な運用方法でしょう。

しかし気分まかせはそれなりのリスクがつきまといます。よかん虫が実現するのは、いい予感ばかりではないからです。

危険性: ★★★★☆

よかん虫は不吉な予感までも現実のものにします。

そのせいでのび太は夕立に遭いました。このとき一緒にいたドラえもんがずぶ濡れになりながらものび太を責めるしかなかったことから、よかん虫はいったん効果が発動したが最後、キャンセルは不可能だと推測されます。

頭からよかん虫を追い払えば済むわけではないようです。

これはとてつもなく恐ろしいことです。これから交通事故に遭って死んでしまう。そんな思いにとらわれたら?

悲観的な人は決してよかん虫に手を出してはいけません。

悪用度: ★★★★☆

ときに憎しみは人にすさまじい執着心を植えつけます。ただひたすらに相手の不幸を願い、信じることができる心境に至ってもなんら不思議ではありません。

そんな境地で頭によかん虫がとまったなら、その呪いは果たされるでしょう。

秘匿性: ★★★☆☆

えっ? 頭にガガンボがとまってる⁉

よかん虫の使用者を見た人は、思わず二度見するかもしれません。そんな間の抜けたインパクトがあります。

でもそのガガンボらしきものが、まさか未来のひみつ道具だとは気づかれないでしょう。陰で笑い者にされて仕舞いです。

ただし同じ人に繰り返し目撃されると、「あの人、いつも頭にガガンボがとまってるね」と変なうわさが広まってしまいます。余計な詮索を避けるためにも、なるべく人目につかないようにする注意が求めされます。

革命度: ★★★★☆

よかん虫で実現できるのは現実にあり得ることだけです。逆にいえば、実際に起こり得ることならなんでも現実のものにできます。

庶民が明日、総理大臣になることはあり得ません。でも10年後、20年後なら?

よくある小さな出来事も、それが延々と積み重なれば大きな結果をもたらします。

「我こそが正義」と信じて疑わない人、自分の嘘を嘘と思わない人。そんな独裁者気質の人は、息をするようによかん虫を使いこなすでしょう。

狂信的な人の手によかん虫が渡ったなら、恐ろしい結末へ突き進むかもしれません。

まとめ

予感をコントロールするのは困難で、結局は気分まかせ。それなのに悪い予感も実現してしまうよかん虫は、なかなか厄介な代物です。

妄想に取り憑かれた人がよかん虫で世界を侵食していく。そんな不吉な予感がします。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、よかん虫の優先度は星1つです。

道具名称:
よかん虫
原作初出:
『ドラえもん』第12巻「よかん虫」
カテゴリ:
「よ」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第12巻 / 万能
公開日:
2018年05月01日

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