自分の不注意で電柱にぶつかったのに、のび太は運が悪いせいにして現実逃避しました。ドラえもんに注意力が散漫なのを注意されても聞く耳を持ちません。それならとりあえずは、とドラえもんが出したひみつ道具が“さいなん報知器”です。
ドラえもんのさいなん報知器は、忍び寄る災難を知らせる腕時計形ひみつ道具です。これを装着している人になにか災難が近づくと、「ビビーッ」とブザーを鳴らして事前に警告してくれます。
さいなん報知器の機能は間違いなく有用です。あえて問題をあげつらうとすれば、それがいったいどのような災難なのか、そこまでは教えてくれない点です。災難からの退避を確実なのものにするためは、具体的な情報が必要となります。
なんにせよ、身に降りかかる災難を事前に感知できるだけでもありがたい。たとえそれが「なにかが起こる」という漠然とした情報だとしても、それで助かるケースも多いはずですから。
さいなん報知器は危険を退ける手助けとなるひみつ道具です。危険どころか、身の安全が高まります。
これといった悪用方法はないでしょう。
さいなん報知器の通知方法はブザーのみで、バイブレーションによる通知は選べないようです。しかもこのブザーが結構うるさいという前時代的な代物です。逆にいえば、これが未来のガジェットだとは誰も思いもしないでしょう。
ちなみにさいなん報知器には竜頭(りゅうず)のような物が付いています。作中では一切触れませんでしたが、これがブザーの音量を調節するツマミである可能性が微レ存です。
音量が調節できなかった場合は、さいなん報知器を取り囲む消音ケースを自作するなどの工夫が必要かもしれません。
さいなん報知器は直近の未来を予知しているといっても過言ではありません。現在使われているどんなテクノロジーの延長線上にもない、まったく新しい原理が用いられているはずです。
とはいえ、これ一つで世界がどうこうなることはないでしょう。
繰り返しの日常を打ち破るひみつ道具もいいけれど、平穏無事な日常を守るひみつ道具もわるくない。消極的な選択がよりよい結果につながることもあります。
この先に待ち受ける大きな災難を退けられるのなら、ブザーがやかましい欠点をどうにかしなければならない面倒も些細な問題です。さいなん報知器は意外と掘り出し物かもしれません。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、さいなん報知器の優先度は星
つです。