なにもやることがなくて退屈したのび太はドラえもんに「なにか笑える話をして」と無茶ぶりしました。急にそんな話をできるはずもありません。それでドラえもんが笑い話をする代わりに取り出したひみつ道具が“ゲラゲライヤホン”です。
ドラえもんのゲラゲライヤホンは、耳につけると、どんな話でも笑い話に感じるようになるイヤホンです。笑ってはいけない場面でも、こらえきれずに吹き出してしまうほど面白い話に聞こえます。
笑う門には福来る。笑いは心と体の健康を助けるといわれています。でも、笑えることが毎日あるとは限りません。お笑い番組を観たって、ツボに入らなければ笑えません。
そこでゲラゲライヤホンです。これさえつければ、笑い話であろうとなかろうと、人がしゃべっているのを聞くだけで必ず笑えます。適当なテレビ番組を観るだけで大笑い。間違いなくストレス解消になるでしょう。
笑うと失礼にあたる場面で笑ってしまうのはかなり手痛いミスです。人前でゲラゲライヤホンをつけていると信頼を失うおそれがあります。
のび太はしずかちゃんの飼っていたカナリアが死んだ話に笑ってしまって、あやうくしずかちゃんに嫌われるところでした。
ゲラゲライヤホンをつけるのは一人きりのときだけにして、テレビやネット動画を観るのにとどめたほうが身のためです。
お葬式や重要な会議でゲラゲライヤホンを誰かにつければ、その人の社会的信用を失墜させられるでしょう。
しかしイヤホンを耳に差し込まれたら、誰だってすぐ気がつきます。なにか口実を作ってつけさせたとしても、その直後から笑いが止まらなくなれば、イヤホンとの因果関係を疑うはず。結局悪用には向いていません。
ゲラゲライヤホンの見た目は普通のフルワイヤレスイヤホンです。その上、人前で使う必然性もないのだから、秘匿性に問題は生じません。
酔っぱらうとやたらに笑うようになる「笑い上戸」と呼ばれる体質の人がいます。そこまで顕著でなくても、大抵の人は酔うと笑いやすくなります。アルコールというごくありふれたものがゲラゲライヤホンに近い効果をもっているわけです。
そう考えると、ゲラゲライヤホンは特別革命的でもないのでしょう。
機械的に作られた笑いにどれほどの価値があるかは疑問です。それでもストレス解消グッズとして機能するのは間違いないだろうし、なかなか「わるくない」ひみつ道具に思えます。
なにはともあれ「ドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえる」という条件下ではさすがに見劣ります。というわけで、ゲラゲライヤホンの優先度は星
つです。