もしも「おせじ口べに・悪口べに」をもらったら

余計なことを言って両親を怒らせたのび太にドラえもんは、「のび太くんは、口がへただから、そんをしてるよ」と諭しました。「この世は口しだい」とまではいかないけれど、確かに口のうまさは世渡りに密接に関係しています。

「でも……。どうほめたらいいのかわかんない」と言うのび太をサポートするためにドラえもんが取り出したのが、“おせじ口べに・悪口べに”です。

機能と効果

両端が使えるスティックタイプの口紅で、片側が“おせじ口べに”、もう一方が“悪口べに”です。

おせじ口べにをつけると、相手を褒めたたえる言葉が次から次へと口をついて出てくるようになります。そのお世辞の威力は、相手がときに感動の涙を流すほど。おだてた相手からは、お礼の品をもらえることが多いようです。

悪口べにをつけると、罵詈雑言の限りを尽くせるようになります。その悪口の非情さは、大の大人であるのび助(のび太の父)が、泣いて地団駄を踏んだほどでした。

おせじ口べに・悪口べにが登場するエピソード「おせじ口べに」では、人間の言葉がわからないはずのイヌにも効果があり、またそれを盗み聞きしていた人にまで効果が波及したことから、一種の催眠効果も付随されていることがうかがえます。

有用性: ★★★☆☆

世渡り上手な人は、得てして口がうまいもの。処世術がものをいう社会人にとって、おせじ口べには、この上ない武器となるでしょう。特に営業職ならば、圧倒的な恩恵をあずかるはず。ここぞという商談をまとめたいときに使わない手はありません。

ただ、おせじ口べには消耗品です。これだけに頼り切って仕事をすると、使い切ってから会社で身動きがとれなくなってしまうかもしれないので、計画的に使う必要があるでしょう。

プライベートな人間関係では、その場しのぎのお世辞ではなく、自分の言葉で関係性を築くものだから、おせじ口べにの有用性は(長い目で見ると)さほど高くないでしょう。

危険性: ★★☆☆☆

おせじ口べにと悪口べにをつけ間違ってしまうと、トラブルになること必至です。どっちがどっちなのか見た目ではわからないようなので、ペットなどを相手に事前に確認して、印をつけておくべきでしょう。

おせじ口べにの威力は絶大なので、無暗に異性に使うと、恋愛トラブルに発展する恐れがあります。

悪態は言わずもがな恨みを買ってしまいます。悪口べにを使うには、それなりの覚悟が必要です。

悪用度: ★★★☆☆

おせじ口べには詐欺行為、特に結婚詐欺に効果を発揮するでしょう。とはいえ、詐欺に即つながるわけではありません。詐欺師には、褒めるだけではない総合的な口のうまさと、道徳心の欠如が必要だろうから。

ときに言葉はとてつもない力を持ちます。映画『羊たちの沈黙』のレクター博士ことハンニバル・レクターが、言葉だけで人を自殺へ追い込んだエピソードは、あながち絵空事では片づけられません。

相手の精神状態しだいでは、悪口べにが発する言葉は紛れもない呪いとなるでしょう。

秘匿性: ★★★☆☆

エピソード「おせじ口べに」は白黒原稿なので詳細は不明ですが、登場人物のリアクションからして、おせじ口べに・悪口べには、かなりどぎつい色をしているようです。

ただでさえ男性は口紅をつける習慣がないのに、更に色がどぎついとなると、目立って仕方がないでしょう。女性であっても、流行のリップカラーとかけ離れていた場合は、余計な気を引いてしまいます。

だからといって、その口紅が現代科学を超えた存在であることに気がつく人がいるとは思えません。目立ちはするけれど、ひみつ道具としての秘匿性は及第点でしょう。

革命度: ★☆☆☆☆

歴史に名を残す革命家たちは、言葉で民衆を扇動してきました。とはいえ、「褒める」と「けなす」のふたとおりだけでは、扇動できる範囲はたかが知れています。また、行動が伴わなければ結局はなにも変えられはしません。

おせじ口べに・悪口べには、消耗品であることも相まって、世の中を変えるような使い方は無理でしょう。

まとめ

褒めることが人間関係にもたらす効果はとても大きいです。だからこそ、道具に頼るのはいかがなものか。やはり人間関係は、自分の言葉で築きたいものです。

自分に使うよりも、けなしてばかりの人(いますよね)につけて、褒めることの大切さを理解させたい。

そんなこんなで、おせじ口べに・悪口べにの優先度は、星1.5つです。

道具名称:
おせじ口べに・悪口べに
原作初出:
『ドラえもん』第1巻「おせじ口べに」
カテゴリ:
「お」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第1巻 / 人心掌握 / 言葉
公開日:
2014年06月29日

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