眠るのは気持ちがいいけれど、その反面、時間がもったいないような気もします。一日の半分も寝ているというのび太ならなおさらです。そこでのび太は「もしも眠らずにいられたら、自分だって勉強する時間があるはずだ」と理屈をこねました。
そこでドラえもんがしぶしぶ出したひみつ道具が“眠くならない薬”です。
「眠くならない薬」という道具名は『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』より。このひみつ道具が登場するエピソード「夜の世界の王さまだ!」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』第6巻収録)では道具名が明示されていません。
未確認ですが、外伝の『ドラ・Q・パーマン』でふたたび登場したときには「ハツラツン」と呼称されていたとの情報もあります。
ドラえもんの眠くならない薬は、強力な眠気覚まし剤です。服用すると24時間まったく眠くならないばかりか、疲れもしません。用量は1回1錠です。
もらえる量は1瓶、50錠入りとします。
のび太は「通常なら寝ている時間を起きて過ごせたら、その分だけ長く生きたことになる」と考えました。これをドラえもん(≒藤子・F・不二雄先生)は「ばかばかしい考え」と捉えたけれど、のび太に賛同する人も多いはず。
手元の小さなスマホからありとあらゆる情報にアクセスできる現代において、時間はあればあるだけ使い道があります。時間に追われないことが真の贅沢だとしても、1日24時間フルに活動することを選ぶのも一つの生き方です。
とはいえ幸か不幸か、眠くならない薬は消耗品で量が限られていますから、「ここぞ!」というときにしか使えません。きちんと使いどころを見極めて服用する分には、ドラえもんも文句をつけないでしょう。
なんにせよ、時間不足の抜本的な解決には至らない対症療法であることは否めません。
まったく眠くならずに疲れもしない状態が24時間も続くというのは、あまりにも強すぎる効能です。おそらく身体にかかる負荷も強いでしょう。副作用が心配です。
こっそりと人に飲ませれば、寝れないことで困惑させられるでしょう。直接的な実害はないのでイタズラの域は越えません。
いっさい食事をせずに生きていると自称する「不食」の人が定期的に現れます。その真偽を明らかにするには、信頼できる第三者機関による厳重な観察が必要です。そしてそんな非科学的な検証に取り組むほど暇な機関はそうありません。
それは「不眠」についても同じこと。証明するのは難しく、むしろ信じてもらうほうが難しいくらいでしょう。
現代で市販されている眠気防止剤とは比べものにならないほど、眠くならない薬の効能は強力です。しかし消耗品である眠くならない薬をドラえもんから1瓶もらったところで、世界への影響は微々たるものでしょう。
量産化されたとしたら話は別です。ただでさえ日本ではブラック企業が問題になっているのに、眠らずに働けるとなればさらに非人道的な過重労働が横行するのが目に見えます。眠くならない薬の実用化はありがた迷惑になりそうです。
1日が24時間では足りなく思えることはよくあります。眠らずに生活できたなら、いろいろとはかどることでしょう。
けれども睡眠を十分にとって、なおかつ生活が充実するのに越したことはないし、それを実現するひみつ道具はほかにあるはずです。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ハツラツンこと眠くならない薬の優先度は星
つです。